【法人向け】交通費を削減する具体的な方法を徹底解説
更新日:2026/07/01

「交通費を削減したいが、どこから手をつければいいかわからない」と悩んでいる法人の担当者は多いのではないでしょうか。
交通費は、通勤手当・出張費・社用車コストなど複数の種類があり、削減するには制度・業務・システムの3つを同時に見直す必要があります。一方で、通勤手当の変更には法的リスクも伴うため、正しい手順を知ることが重要です。
この記事では、法人が取り組める交通費削減の具体的な方法から、精算業務のデジタル化、不正防止の管理体制まで幅広く解説します。コスト削減の進め方を検討している方はぜひ参考にしてください。
法人が負担する交通費の種類

法人が負担する交通費には、大きく3つの種類があります。
- 通勤交通費(通勤手当)
- 旅費交通費(出張費・営業交通費)
- 社用車にかかる燃料費・駐車場代
それぞれ性質や管理方法が異なるため、削減策を講じる前に整理しておくことが重要です。
通勤交通費(通勤手当)
通勤交通費とは、従業員が自宅から職場まで通勤するためにかかる費用を会社が補填するものです。
支給方法は企業によって異なりますが、定期券代の支給や、出勤日数に応じた実費精算など、さまざまな形式があります。支給額は居住地や通勤手段によって従業員ごとに異なるため、個別の管理が必要です。また、従業員数が多いほど総支給額も大きくなります。
固定的なコストになりやすい点から、交通費削減を考える上でまず見直すべき項目です。
旅費交通費(出張費・営業交通費)
旅費交通費とは、出張や営業活動で発生する移動費用のことです。
新幹線・飛行機・タクシーなど複数の交通手段が混在し、出張頻度や距離によって金額が変動するため、通勤手当と比べてコストの把握が難しい傾向があります。
適切な旅費規程を整備することで、過剰な支出を防ぐことができます。
社用車にかかる燃料費・駐車場代
社用車を保有する法人では、燃料費や駐車場代も交通費として計上されます。
走行距離や利用頻度に応じて変動する一方、管理が属人的になりやすく無駄なコストが見えにくいという課題があります。
車両ごとの利用状況を記録・可視化する仕組みを整えることが、コスト削減の第一歩です。
交通費にまつわる基礎知識

交通費削減に取り組む前に、法人が押さえておくべき基礎知識があります。
- 通勤手当の非課税限度額
- 通勤手当の法的位置づけ
- 出張旅費規程の基本ルール
それぞれ説明していきます。
通勤手当の非課税限度額
通勤手当には、所得税がかからない「非課税限度額」があります。
限度額は通勤手段によって異なります。電車やバスなどの公共交通機関を使う場合は、月額15万円が上限です。マイカーや自転車の場合は、片道の通勤距離に応じて上限額が段階的に決まります。
限度額を超えて支給した分は、給与として所得税の対象になります。支給額を設定する際は、非課税限度額を必ず確認しましょう。
出典:国税庁|No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
出典:国税庁|No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
通勤手当の法的位置づけ
通勤手当は、法律で支給が義務づけられているものではありません。
支給するかどうか、金額や支給条件をどう決めるかは、一定の範囲で会社が自由に定められます。ただし、就業規則や賃金規程に「支給する」と定めた場合は話が変わります。その場合は賃金として扱われるため、支給条件を満たす従業員に支払わないと賃金未払いとなり、労働基準法違反になります。
また、正社員と非正規社員の間で不合理な支給差を設けることは、同一労働同一賃金の観点から問題になる場合があります。
出典:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン
出張旅費規程の基本ルール
出張旅費規程とは、出張時の交通費・宿泊費・日当などの支給ルールを定めた社内規程です。
規程を整備すると、精算業務の効率化と不正防止につながります。さらに、規程に基づいて支給する日当は、受け取る従業員に所得税がかかりません。支払う会社側も損金として計上できるため、節税効果があります。
ただし、支給額が世間の相場と比べて高すぎると、税務調査で否認されるリスクがあります。金額は適正な範囲に収めることが重要です。
出典:国税庁|No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い
法人が取り組む交通費削減の5つの方法【通勤費編】

通勤費を削減する方法には、主に次の5つがあります。
- 定期券を長期支給に切り替える
- 通勤ルートを最安経路に統一する
- テレワーク導入で実費精算に変更する
- 自転車・徒歩通勤を制度として奨励する
- 近隣居住者への家賃補助を活用する
それぞれ説明していきます。
1. 定期券を長期支給に切り替える
定期券は、購入期間が長いほど1ヵ月あたりの金額が安くなります。
毎月1ヵ月定期を支給している場合は、6ヵ月定期への切り替えを検討する価値があります。
ただし、途中で退職や転居があると払い戻しが発生します。払い戻しは1ヵ月単位で計算されるため、残りが1ヵ月未満の場合は払い戻しを受けられない場合がある点に注意が必要です。
2. 通勤ルートを最安経路に統一する
通勤手当は「経済的かつ合理的な経路」で計算するというルールがあります。
従業員が申告した経路をそのまま承認しているだけでは、より安いルートが見落とされることがあります。支給前に経路を確認し、最安経路を社内ルールとして明文化することが大切です。
3. テレワーク導入で実費精算に変更する
テレワークで出社日数が減った場合、定期券代の支給から実費精算に切り替えることでコストを抑えられる場合があります。
ただし、定期券の割引率によっては実費精算の方が高くなることもあるため、事前にシミュレーションが必要です。また、支給方法の変更には就業規則の改定が必要です。従業員にとって不利益な変更となる場合は、労働組合や従業員代表への説明と合意が求められます。
4. 自転車・徒歩通勤を制度として奨励する
自転車や徒歩での通勤を会社が制度として推奨することで、交通費を削減できます。
国土交通省の調査では、自転車通勤を推奨している事業者を対象に、従業員1人あたり年間平均約5万円の交通費削減効果が確認されています。ただし、事故リスクへの対応として、申請・許可制の導入と損害賠償保険への加入義務づけが必要です。
5. 近隣居住者への家賃補助を活用する
職場の近くに住む従業員に家賃補助を支給することで、通勤手当を削減できます。
なお、現金で支給する家賃補助は給与として全額課税対象になります。課税を抑えたい場合は、会社が物件を契約して従業員に貸し出す「社宅制度」の活用を検討してください。
法人が取り組む交通費削減の4つの方法【出張・営業費編】

出張や営業にかかる交通費を削減する方法には、主に次の4つがあります。
- Web会議で出張回数そのものを減らす
- LCC・早期割引を社内ルールに組み込む
- タクシー利用の条件・上限を旅費規程で定める
- 社用車の燃料費・駐車場代を管理する
それぞれ説明していきます。
1. Web会議で出張回数そのものを減らす
出張費を削減する最も直接的な方法は、出張そのものを減らすことです。
ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールを活用することで、移動を伴わずに打ち合わせを行えます。すべての出張をWeb会議に置き換えることは難しいものの、「初回の顔合わせは対面、その後の定例はオンライン」といったルールを設けるだけでも、出張回数を大きく減らせます。
どの会議をWeb会議にできるかを社内で整理し、基準として明文化することが重要です。
2. LCC・早期割引を社内ルールに組み込む
飛行機を使う出張では、LCC(格安航空会社)の活用や早期購入が有効な節約手段です。
早割は、搭乗日の28日前や75日前などの一定の期限までに予約することで、通常運賃より大幅に安くなる割引制度です。予約期限が早いほど割引率は高くなりますが、キャンセル時の手数料が高く、予約変更ができないものがほとんどです。
「出張が決まり次第、最安経路・早割で予約する」というルールを旅費規程に明記するなど、担当者任せにならない仕組みを作ることが大切です。
3. タクシー利用の条件・上限を旅費規程で定める
タクシー代は、ルールがなければ個人の判断に委ねられ、コストが膨らみやすい項目です。
「公共交通機関が利用できない時間帯」「荷物が多い場合」「複数人での移動」など、タクシーを使える条件を旅費規程に具体的に定めることで、不必要な利用を防げます。また、1回あたりの上限金額を設けることも有効です。
ルールが明確であれば、従業員も判断しやすくなり、経理担当者が申請内容を確認する手間も減ります。
4. 社用車の燃料費・駐車場代を管理する
社用車を保有している法人では、燃料費や駐車場代の管理が交通費削減の重要なポイントです。
走行距離や利用目的を記録する「運行日誌」をつけることで、無駄な走行や私的利用を防げます。また、法人向けのガソリンカードを活用すると、給油明細が自動的に管理でき、燃料費の可視化が容易になります。
交通費精算のデジタル化で間接コストを削減する

交通費の削減は、支給額の見直しだけでなく、精算業務の効率化も重要です。紙やエクセルで管理している場合、手入力ミス・領収書の紛失・二重申請のチェック漏れなどが起きやすく、経理担当者の人件費という「間接コスト」が膨らみます。
デジタル化によってこれらの課題を解決する方法には、主に次の3つがあります。
- ICカード連携で交通費を自動取得・精算する
- 電子帳簿保存法対応で領収書管理を効率化する
- 会計・給与ソフト連携で仕訳・振込を自動化する
それぞれ説明していきます。
ICカード連携で交通費を自動取得・精算する
交通費精算システムの中には、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの利用履歴を自動で取得できるものがあります。
従業員がICカードをシステムに読み込ませるか、モバイルSuicaなどのアカウントと連携することで、乗車区間・日時・金額を自動で取得できます。手入力が不要になるため、申請ミスや不正申請を防ぎやすくなります。また、経理担当者が金額や経路を一件ずつ確認する手間も大幅に減ります。
なお、交通系ICカードによる支払いデータは電子取引に該当するため、電子帳簿保存法の要件に沿った形での電子保存が必要です。
電子帳簿保存法対応で領収書管理を効率化する
2024年1月から、電子取引でやりとりした書類データの電子保存が完全義務化されています。
これはメール添付のPDFや、ECサイトでダウンロードした領収書なども対象です。紙に印刷して保管する方法は原則として認められなくなりました。電子データで受け取った領収書は必ず電子保存が必要です。
一方、紙の領収書をスマートフォンで撮影して電子保存する「スキャナ保存」は任意ですが、対応することで紙のファイリングや保管スペースを削減できます。
経費精算システムを導入すると、どちらの方法にも対応しやすくなります。
会計・給与ソフト連携で仕訳・振込を自動化する
交通費精算システムと会計ソフト・給与ソフトを連携させると、精算後のデータを自動で仕訳に反映できます。
従来は、承認済みの精算データを経理担当者が手動で会計ソフトに入力していました。連携により、この転記作業がなくなります。また、給与ソフトと連携すれば通勤手当の支給も自動化でき、振込ミスや計算誤りのリスクを減らせます。
精算から支払いまでの一連の流れをシステムでつなぐことで、経理業務全体の効率化につながります。
通勤手当の見直し・廃止の進め方

通勤手当の見直しや廃止は、正しい手順を踏まないと労使トラブルに発展するリスクがあります。下記の5つのステップで進めましょう。
- ステップ1:就業規則・賃金規程の現状を確認する
- ステップ2:廃止・減額が不利益変更に該当するか判断する
- ステップ3:従業員・労働組合に説明し合意を取得する
- ステップ4:就業規則を変更し労働基準監督署に届け出る
- ステップ5:新しい支給ルールを全社に周知する
それぞれ説明していきます。
ステップ1:就業規則・賃金規程の現状を確認する
まず、就業規則や賃金規程に通勤手当がどのように定められているかを確認します。
支給条件・支給額・対象者・計算方法を正確に把握することが最初のステップです。規程の書き方によって次に必要な手続きが変わるため、支給実態と規程の内容に乖離がないかも合わせて確認しておきましょう。
ステップ2:廃止・減額が不利益変更に該当するか判断する
通勤手当は就業規則に定めることで賃金となるため、廃止・減額は従業員への不利益変更に該当します。
不利益変更には原則として従業員個人の同意が必要です(労働契約法第9条)。同意が得られない場合でも、変更に合理的な理由があり周知を行うことで変更できる場合があります(労働契約法第10条)。
ただし賃金に関わる変更は合理性の判断が厳しく、できる限り個別同意を取得することが望まれます。
出典:厚生労働省|確かめよう労働条件:労働条件の引き下げ(裁判例)
ステップ3:従業員・労働組合に説明し合意を取得する
見直しの必要性・内容・理由を従業員や労働組合に丁寧に説明します。
テレワーク導入による出社日数の減少など、変更の背景を具体的に示すことで理解を得やすくなります。通勤手当を廃止する場合は、在宅勤務手当の新設など代替措置を検討することで不利益を緩和できます。
同意取得は強要と受け取られないよう、書面で丁寧に進めましょう。
ステップ4:就業規則を変更し労働基準監督署に届け出る
合意が得られたら、就業規則・賃金規程を変更します。
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、変更後に労働基準監督署への届け出が義務です(労働基準法第89条)。届出には変更後の就業規則・就業規則変更届・従業員代表者の意見書が必要で、届出を怠ると30万円以下の罰金が科される場合があります。
ステップ5:新しい支給ルールを全社に周知する
変更後の就業規則は、すべての従業員に周知する義務があります(労働基準法第106条)。
社内掲示・イントラネットへの掲載・書面の配布など、従業員がいつでも確認できる方法で周知します。新しい支給条件や計算方法は誤解が生じやすいため、Q&Aを用意して具体的に説明することが効果的です。
周知が不十分な場合、変更した就業規則の効力が認められないリスクがあります。
交通費の不正受給・過払いを防ぐ管理体制

交通費の不正受給が発覚した場合、適切な手順を踏まないと返還請求や懲戒処分が無効になるリスクがあります。まずは不正が起きやすいケースを把握し、発覚時の対応フローをあらかじめ定めておきましょう。
不正受給が起きやすいケースを把握する
不正受給には、主に次のようなケースがあります。
- 引越し後も住所変更を届け出ず、従来の通勤手当を受け取り続ける
- 定期区間内の移動にもかかわらず、別途交通費を申請する(二重申請)
- 実際の通勤経路より高額なルートを申請する
いずれも「ルールが曖昧」「申請内容を確認する仕組みがない」という環境で起きやすくなります。自社でどのケースが起きやすいかを把握したうえで、対策を講じましょう。
不正発覚時の返還請求・懲戒処分フローを定める
不正が発覚したら、まず事実確認を行い、本人に弁明の機会を設けます。
不正受給が確認された場合、会社は過払い分の返還を請求できます。ただし、給与から一方的に天引きすることは賃金全額払いの原則に違反します(労働基準法第24条)。本人の書面による同意を得たうえで返還を求めましょう。
懲戒処分の重さは、不正の金額・期間・悪質性・故意の有無を総合的に考慮して判断します。処分が重すぎると無効とされた判例もあるため、段階的に検討することが重要です。
まとめ|交通費削減は制度・業務・システムの三位一体で進める
交通費削減を成功させるには、3つの視点から同時に取り組むことが重要です。
まず「制度」の面では、通勤手当の支給ルールや旅費規程を整備し、支給基準を明確にします。次に「業務」の面では、テレワークの導入や定期券の長期切り替えなど、実際の運用を見直します。そして「システム」の面では、交通費精算のデジタル化により、間接コストと不正リスクを同時に減らします。
どれかひとつだけでは効果は限定的です。制度・業務・システムを一体で進めることで、法人全体の交通費削減につながります。
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